<不整脈(9)>

 突然死で亡くなる人は年間約3万人。その多くは「心室細動」によって亡くなっていることがわかっています。その怖い心室細動を抑える最も効果的な方法は、「植え込み型除細動器(ICD)」を使った治療です。心室細動が起きた時に、リードが感知するとICDからすぐに心臓に電気ショックを与え、拍動を正常な状態に戻してしまうのです。すぐれた医療機器です。

 ICDの植え込み方法は基本的にペースメーカーと同じです。植え込むところで多いのは、鎖骨下。そこの皮膚を切開し、皮膚と筋肉の間にICDの本体を植え込みます。植え込まれた本体からリード線を血管内に挿入し、そこから右心房、右心室に挿入します。この場合、心室のみの場合もあります。

 リード線は挿入して設置は終了というわけではありません。ICDの効果を確認する必要があります。ICDの手術中に心室細動を誘発して、ICDで確実に心室細動を止められるかを確認します。患者さんは手術時には局所麻酔ですが、眠った状態で行われるので、その確認テストによる苦痛などはありません。皮下にICDを埋め込む皮下植え込み型除細動器(SICD)は全身麻酔での手術となります。

 手術後は3~6カ月サイクルで、定期検査を受ける必要があります。電池の残量は、ICDの作動状況によって違ってくるからです。だいたい4~5年で電池の交換となるのが一般的です。そのときは手術で電池だけを交換します。

 ただ、ICDを植え込んだ場合、車の運転などで条件が付くことがあります。タクシードライバーなどはこの治療を受けると、その仕事はできません。そのあたりは、十分に理解する必要があります。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)