<不整脈(12)>

 拍動のリズムが遅くなる「徐脈性不整脈」は、重篤な状態になると「ペースメーカー」を植え込みます。これで心臓をリズミカルに拍動させ、生命維持ができるのです。しかし、問題点もあります。「本体とリードの2つがあるので、断線することがある」、「電池が消耗するため、8年くらいで再手術が余儀なくされる」。大きくこの2点が、患者さんにとっての問題点でした。

 それを解決した注目のペースメーカーが、昨年9月1日から使えるようになりました。「リードレスペースメーカー」です。サイズは長さが26ミリ、重さは1・75グラムと非常に小さい。これまでのペースメーカーの10分の1の大きさで、一般的なビタミンカプセル程度。バッテリーは12年くらい持ちます。

 設置法は、太ももの付け根にある大きな血管(静脈)からカテーテル(細い管)を挿入し、心臓の右心室までリードレスを運びます。リードレスの先端には釣り針のような針が4つ付いていて、針を2つ心臓の壁に刺し、固定して正常に作動することを確認して、カテーテルを抜き取ります。

 固定したリードレスは2度と取り出すことはなく、電池が消耗すると再度挿入します。3個までは挿入できます。将来的に、もっとサイズは小さくなると思われますので、3個という限界はなくなると思われます。そして、本体を植え込むポケットを作る必要がないので、胸に傷がつくことはなく、合併症のリスクも半減しました。また、ペースメーカーでは運動制限がありましたが、リードレスではなくなりました。

 ただ現時点では、心房・心室いずれにも問題のある不整脈患者さんは、この対象とはなりません。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)