<心臓弁膜症(2)>

 「心臓弁膜症」は心臓の弁が正常に機能しなくなるもので、最悪の場合、突然死に結びつくこともあります。日本の患者数は250万人と多く、毎年約1万5000人が手術を受けられています。その手術の95%を占めるのが「僧帽弁」と「大動脈弁」です。今回は僧帽弁にスポットをあてます。

 僧帽弁は左心房と左心室の間にあり、僧帽弁が開いて心臓のメインポンプの左心室に血液が流れ込みます。僧帽弁で多いのは「僧帽弁閉鎖不全症」です。

 僧帽弁は、2枚の柔らかい葉っぱのような弁尖(べんせん)でできていて、開いたり閉じたりしています。その僧帽弁が障害されて閉鎖できなくなるのが僧帽弁閉鎖不全症です。僧帽弁がどのように障害されるのか-。多いのは、僧帽弁を支えている糸である腱索(けんさく)が切れてしまって、これまでのようにピシッと閉じなくなってしまうのです。弁が閉じることで逆流を防いでいたのが、しっかり閉じなくなってしまうと逆流が起こるようになります。肺から戻ってくる血液をブロックしてしまうことになるので、肺に水がたまり、「心不全」になります。

 その典型的な症状が「息が切れる」「動悸(どうき)がする」「呼吸が苦しい」「疲れやすい」などです。かつては、リウマチ熱や感染性心内膜炎によるケースが多かったのです。今日では高齢化、食生活の欧米化などが原因で弁の形態が変性するから起こる、と思われます。

 状態を診て、治療は開始されます。まずは薬物療法で様子を見ます。血管拡張薬と利尿剤が中心となりますが、その薬の効果には限りがあります。肺の水が取れなくなると、手術と判断されます。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)