<心臓弁膜症(3)>

 「僧帽弁閉鎖不全症」は心臓弁膜症の1つ。進行すると心不全になってしまう疾患で、患者さんの多いことでも知られています。治療は、まず薬物療法で様子を見ます。確かに血管拡張薬と利尿剤で、多少効果は見られますが、それには限度があり、肺の水が取れなくなると手術になります。

 僧帽弁閉鎖不全症の手術は「弁形成術」と「弁置換術」が行われています。僧帽弁が障害されてうまく閉鎖されなくなるのは、僧帽弁を支えている腱索(けんさく)が切れるか、伸びてしまうからです。弁形成術は、患者さんの弁の状態で修復方法が異なります。人工の糸で弁の高さを矯正したり、余分な部分を一部切り取って縫い合わせたりします。

 一方、弁置換術は弁を取り換えてしまう手術。弁をきれいに取り、その後に人工弁を入れます。ただ、僧帽弁閉鎖不全症での弁置換術は、弁形成術が困難な場合のみ。弁置換術になるケースは5~10%程度で、弁形成術でほぼ100%対応している医療施設もあります。

 このような弁形成術で、心臓外科医の実力がはっきりわかります。弁を生まれた時の機能にかなり近い状態にまで治すのは、経験と技術がなくてはできません。やはり、この心臓外科医に-と思える優秀な心臓外科医の手術を受けるべきでしょう。

 弁形成術後は、血液をサラサラにするワーファリンが術後3カ月のみの服用で済みます。生涯にわたって服用することがないのも良い点です。

 弁形成術は胸を14センチ程度切ることになりますが、それをわずか6センチの小切開で行っている医療施設もあります。これは患者さんの「体にやさしい手術」です。その小切開を行っている医療施設は増えています。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)