<心臓弁膜症(4)>

 心臓弁膜症の1つの「僧帽弁閉鎖不全症」は、僧帽弁を支えている腱索(けんさく)が切れたり伸びたりして、弁がキッチリ閉じなくなる疾患。進行すると心不全になってしまいます。その治療の多くは「弁形成術」で、その他に「弁置換術」が行われています。

 手術の方法は、ごく一般的な胸を14センチ程度切って行う「開胸手術」、胸をわずか6センチ切るだけで行う患者さんの“体にやさしい”「小切開手術」、そして、保険適応ではないが“より体にやさしい”「ロボット手術」が行われています。

 ロボット手術は、「前立腺がん」「腎がん部分切除」では保険適応。前立腺がんでは、手術の約80%がロボット手術で行われており、大きく進化しています。「胃がん」「子宮がん」「ぼうこうがん」などでも保険適応となるのは近い、といわれています。

 そのロボット手術が現段階では、心臓疾患については自費診療で行われています。疾患として手術の多い順にあげると「僧帽弁閉鎖不全症」「狭心症・心筋梗塞」「心房中隔欠損症」などです。ロボット手術の指針もできて、少しずつロボット手術を行う施設が増えてきそうな状況になってきました。

 ロボット手術の良さは“体にも心にもやさしい手術”にあります。一般の開胸手術に比べ、身体的にも精神的にも負担が軽減されるのがメリット。「傷口が小さい」のみならず、「出血は極めて少ない」「術後の痛みが少ない」「早期に退院ができる(早いと術後3日目に退院)」など。私は患者さんの体・精神にやさしい治療、そして、術後の成績にも問題がなければ、これから必要性がどんどん増えてくる手術だと思います。

 今、ロボット手術はダ・ヴィンチという高額な医療機器で行われています。しかし、その特許が切れたので、近々に日本製の低額なロボットが誕生し、ロボット手術はさらに広がると思います。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)