<心臓弁膜症(6)>

 心臓疾患の中で、「狭心症・心筋梗塞」と「不整脈」に次いで患者さんが多いのが、「心臓弁膜症」です。その心臓弁膜症の中で「大動脈弁疾患」が、最も手術になるケースが多い。大動脈弁疾患には「大動脈弁閉鎖不全症」と「大動脈弁狭窄(きょうさく)症」があり、進行して“座っていても息が切れる”状態にまで進行してしまうと、死が目前に迫っている状態です。

 医師の言葉として、「様子を見ましょう」とよく聞くと思います。しかし、この状態で様子を見ることは、今はありません。現在は、できるだけ早く大動脈弁を改善し、心臓を元の状態にしようという流れが基本です。

 大動脈弁疾患の手術は1つではありません。患者さんの希望に合わせていくつもの手術があり、選択が可能です。「人工弁置換術(機械弁)」「人工弁置換術(生体弁)」「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」「TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)」の4つがあります。それらの手術はどのようなものでしょうか。

 ◆人工弁置換術(機械弁) 機能が損なわれた大動脈弁を切除し、これを人工弁に取り換えます。人工弁には「機械弁」と「生体弁」があり、機械弁は、パイロライトカーボンという特殊なカーボンで作られています。すでに35年以上の歴史があり、デザインも変わらず使われ、要となる機械弁自体も壊れることがありません。その点では、信頼度は高いといえます。

 ただ、機械弁には大きな問題点があります。体に異物を入れることになるので、血栓ができる点です。その血栓ができないようにするには、機械弁を入れてから一生、抗凝固薬を服用しなければなりません。薬の飲み忘れは命取りにもなりかねない、というリスクを背負うことになります。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)