<心筋症(1)>

 心疾患の中で認知度の高いのは、患者さんの多いこと、また突然死にも関係するとあって「狭心症・心筋梗塞」がトップです。ただ、イコール心臓移植と長く考えられてきた重症疾患として、「心筋症」の認知度も高い。今回から、その心筋症を紹介します。

 重症疾患である心筋症の病名は、まさしく「心臓」「筋肉」「病気」をコンパクト化したものです。中心になるのは筋肉で、心臓の筋肉の異常によって、心臓がうまく機能しなくなる病気です。

 実際、心筋がゴム風船を膨らませ過ぎた後のように伸びきってしまったり、あるいは逆に、心臓の筋肉が異常に厚く肥大したりします。心臓がこのような状態であれば、心臓の働きは悪くなり、身体が欲しがっている血液量を全身に送り出せなくなってしまいます。

 この心筋症には、いくつかのタイプがあります。大きくわけると「拡張型心筋症」と「肥大型心筋症」になります。

 さらに、拡張型心筋症には「虚血性」と「非虚血性」があります。虚血性は心筋梗塞と大いに関係があります。冠動脈が動脈硬化で狭くなり、心筋梗塞を起こしてしまう。一命は救われても、心筋梗塞の後、そこの心筋が薄くなって伸びてしまい、心臓の壁が拡張してゆがんでしまいます。これが虚血性で、重症の心筋梗塞です。

 一方、非虚血性はいわゆる原因不明の難病が多い。ウイルスなどに感染して起こる心筋炎などが原因になるものもありますが、多くは原因不明です。日本の心臓移植の多くは拡張型心筋症なのです。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)