<たこつぼ型心筋症(2)>

 災害時の大きなストレスが誘因となり、患者さんが増加していることが分かった「たこつぼ型心筋症」。突然の胸痛に襲われる「狭心症・心筋梗塞」同様に、この疾患も一刻を争うので、緊急性を要する耐えられない症状の時は、すぐに救急車を呼びましょう。

 緊急を要するたこつぼ型心筋症とは、どのような疾患なのでしょうか。それは、疾患名で表現されています。心臓は全身に血液を送り出して、全身の細胞に酸素と栄養を供給しています。その心臓から血液を送り出すところが、左心室です。左心室全体が規則正しく収縮しているのです。

 ところが、大きな精神的ストレスがのしかかると、左心室の先端部(心尖部=しんせんぶ)の収縮力が弱くなり、左心室の大動脈弁に近い根元の部分(心基部)の少し手前だけが、収縮する状態になります。その程度の収縮では、全身へ十分な血液を送り出せません。その時の左心室の形が、たこつぼのような形なので、命名されたのです。ただ、なぜたこつぼ型になるかについては、まだ明らかになっていません。

 たこつぼ型心筋症で亡くなった患者さんについては、正確な数字は分かっていません。救急車で運ばれる途中で亡くなった患者さんの死因を特定することはできませんが、一般的には、心筋梗塞と診断された人の1%程度が、たこつぼ型心筋症と考えられています。突然死するケースもあるので、十分な対応が必要です。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)