<胸部大動脈瘤(1)>

 心臓病では突然死に結びつくケースが少なくない。21日には、俳優の大杉漣さんが急性心不全で亡くなられてしまった。66歳という若さで、まだまだ活躍して欲しかったと思うと、残念です。

 突然死は血管の疾患でも多く起こります。ここでは「胸部大動脈瘤(りゅう)」を取り上げます。

 血液は心臓の左心室から送り出され、大動脈を通って全身に運ばれています。心臓から血液が送り出されると、まずは上行大動脈で上昇し、次に、弓のように180度カーブしている弓部大動脈を通ります。ここで頭頸部(けいぶ)や腕に行く動脈が枝分かれし、カーブが終わると胸部下行大動脈、そして、腹部大動脈となって多くの動脈が枝分かれしていきます。その上行・弓部・下行大動脈に瘤(こぶ)ができるのが、胸部大動脈瘤です。

 この瘤のできる原因は「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」などの生活習慣病や「喫煙」など、動脈硬化が基礎にあるケースと考えられています。このほかに「遺伝的素因」もあると考えられています。年齢的には50歳以上に多く、男女比は4対1で男性に多い傾向があります。

 さて、この瘤ですが、多くの方は瘤と聞くと「袋状の瘤」を思い描かれるでしょう。しかし、そのタイプの他に血管が全体的に膨らむ「紡錘(ぼうすい)状の瘤」があります。胸部大動脈の太さは成人で25~30ミリで、これが50~60ミリに膨らむと手術の適応となります。それは破裂するリスクがアップするからで、胸部大動脈瘤の場合は、破裂すると救命が極めて困難なのがつらいところです。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)