<心臓・血管を若々しく保つコツ(2)>

 心臓の冠状動脈の疾患といえば、「狭心症・心筋梗塞」があまりにも有名です。その大きな原因が、血管の動脈硬化です。動脈硬化と聞いてすぐに思い描くのは、コレステロールではないでしょうか。動脈硬化を悪化させるLDLコレステロールは「悪玉コレステロール」、それを抑えるHDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれています。

 ビールには、このHDLを増やす効果があることが分かっています。米国のジョンズ・ホプキンズ大学のリチャード・D・ムーア氏は、アルコールを週に数日ほど飲む健康な人々をAとBのグループに分割。Aグループには毎日ビール1缶を飲んでもらい、Bグループには全く飲まないようにしてもらいました。

 そして、総コレステロール、LDL、HDLを調べたところ、大きな変化はありませんでした。ただ、HDLの構成因子でコレステロール排出を促進する「アポA-1」が増えていたのです。つまり、HDLの内容がより充実したので、動脈硬化が起きにくくなることが証明された、といえます。

 事実、ビールの国・ドイツでは、ビールを飲む人と飲まない人とでは、ビールを飲む人の方がHDLの数値が5~15mg/dl(ミリグラム・パー・デシリットル)も高いという疫学調査が報告されています。ビールは血液をきれいにし、動脈硬化も予防するのです。

 また、ビールのホップ由来の苦み成分「イソα酸」が、アルツハイマー病などの認知症予防に効果があることが、東大、学習院大などの研究チームによって2016年に発表されています。ただし、「動脈硬化に良し、認知症に良し」で飲み過ぎると、アルコールによる悪影響が…。やはり、適量に限ります。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)