<信頼できる心臓外科医とは(3)>

 患者さんが「信頼できる心臓外科医とは」-。それは、「手術前にどのような手術を行うのか、患者さんに不安を抱かせることなく、納得できるように話してくれる心臓外科医」です。この患者さんとの話し合いで、患者さんはいくつかある手術の中で、どの手術を選択すべきかを考え、自分に最も適した手術を選ぶことができるのです。

 中には、自分が得意な手術だけを説明する心臓外科医もいますが、それは問題外です。それでは、手術後に「こんなはずではなかった」と、患者さんが思ってしまうことも起きかねません。信頼できる心臓外科医は、そのようなことは決してしません。だから、手術のことを患者さんに話す時は、どのような手術があるかをすべて話します。

 例えば、私が数多く行っている心臓弁膜症の大動脈弁の手術でも、「自己心膜を使った手術しかないですよ。この手術を受けるべきです」といった手術説明は決してしません。

 大動脈弁の手術には、大動脈弁を人工の弁にする「人工弁置換術(機械弁&生体弁)」「自己心膜を使用した大動脈弁形成術」「TAVI(タビ=経カテーテル大動脈弁留置術)」が行われています。患者さんの状態によって、適応しない手術もあります。また、それぞれの手術にはメリット、デメリットがあります。それをきちっと話して、患者さんが自分自身に最も適した治療を選択できるようにするのが、信頼できる心臓外科医です。

 最近目立っているのは、「狭心症・心筋梗塞」の患者さんに対する循環器内科医の説明です。最初から「カテーテル治療をしましょう」と、患者さんに選択の余地を与えないのです。これは、患者さんの信頼を得られなくなる始まりだと思います。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)