<信頼できる心臓外科医とは(4)>

 心臓外科医のもとを訪れる患者さんは、心臓の手術を考える状況に置かれた方々です。やはり、手術のことになると、心配して当然です。いろいろ知りたいことを紙に書いて、持参して来る方もいます。「先生はどれくらい手術をされ、患者さんの死亡率はどれくらいですか?」といった質問もあります。私はきちっと話します。

 手術成績を話すことができるのは、きちっと自分の手術を整理しているからです。ところが、そのような質問をされると、患者さんの前であっても、嫌な顔をする心臓外科医もいます。それでは、患者さんの気持ちを理解できていません。地域で知られる心臓外科医であっても、患者さんはそのような心臓外科医に自分の生命を託すべきではありません。きちっと成績が分かると、患者さんには安心感が出てくるのです。

 また、患者さんから「心臓を止めている時間はどれくらいですか」と質問されることもあります。心臓弁膜症の大動脈弁の手術で、私が行っている自己心膜を使用したものでは、心臓を80~90分程度止めます。

 一方、人工弁に替える人工弁置換術であれば、先生によって違いはありますが、早いと60分程度です。私の手術の方が20~30分程度、心臓を止めている時間が長くなります。しかし、それによる心臓への問題はありません、ときちっと話します。そうすることで、患者さんは疑問なく、納得して手術を受けることができるのです。

 患者さんは「先生、これで安心して手術が受けられます」と言ってくださいます。うれしい言葉です。この言葉を聞くことができる心臓外科医であることが、重要です。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)