医師でジャーナリストの森田豊氏(54)が、「ドクター森田の『健康になりなさい!』」と銘打って健康への取り組みを指南します。世の中は体のために「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の情報にあふれ、その中には意外な落とし穴も散見されます。ここでは食生活、アルコール摂取、性など生活習慣から心身の健康に至るまで、医学的根拠に基づいた最新情報で、確かな健康法に迫ります。さあ、これを読んであなたも「健康になりましょう!」。

 出勤前の「キス」が、寿命を延ばす!? カナダ、ローリエ大学のドイツ人研究者、アーサー・サズボ氏によると、出勤前にキスをしてから家を出るカップルのほうが、寿命は5年長いというデータが出ています。また交通事故に遭う確率も低く、さらに欠勤率が低く、収入も25%高いというのです。

 また、米国のケース・ウエスタン・リザーブ大学で行われた実験で、結婚している男性で「奥さんに愛されているか?」という質問にイエスと答えた人は、ノーの人に比べて狭心症を起こす確率が低くなることが報告されています。キスされることや、愛されていると自覚することで、人は健康を保てる可能性があるという結果です。

 少なくとも20秒以上の長めのキスをすると、ストレスレベルが劇的に低下するという調査結果が、米科学者たちから報告されています。「20秒以上なんて、忙しい朝には悠長すぎるでしょう」と言いたくなりますが、これはキスにより、脳内で分泌されたエンドルフィン、オキシトシンやドーパミンといった快感ホルモン(幸福ホルモン)が血流に放出され、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを抑制するからです。

 フレンチキスなど舌を激しくからませたディープキスをすると、顔の39種類の筋肉を使い、仮に20分間続けるとすれば、120キロカロリーのエネルギーを消費するそうですから、これは約1時間分のウオーキングに匹敵する活動量です。

 キスの最中に分泌される「恋愛ホルモン」といわれているオキシトシンには、食欲を抑える効果もあります。12人の肥満気味の人を含めた25人の男性に対し、鼻スプレーとしてオキシトシンまたは何の成分も入っていない偽薬を投与し、食事をしてもらった研究があります。

 オキシトシンを投与されたグループでは、偽薬に比べ摂取量が122キロカロリー少ないという結果になりました。脂肪については平均で9グラム、80キロカロリーの摂取量も減っています(米ハーバード・メディカル・スクールのエリザベス・ローソン准教授らの研究)。

 このように、愛情表現としてだけではなく、健康面でもさまざまな効果があるキス。恋人やパートナーとの愛情表現をためらっている場合ではないのです。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。