1900年代前半は、日本人は肺炎で亡くなる方が非常に多かったです。しかし、抗生物質の普及や発達とともに、急速に肺炎の治療成績は向上しました。

 80年ごろより、また肺炎は多くなり、現在、日本人の死因の第3位は、肺炎です。1位はがんですが、がん検診率の向上などの対策も可能ですし、また2位は心疾患ですが、これも生活習慣の改善で対策が可能です。この先、高齢化社会で肺炎はもっと増え、日本人の死因の1位になる時代も来る可能性があるように思います。

 ここでは、年をとってからの肺炎の症状を挙げます。お年寄りの肺炎の約7割は誤嚥(ごえん)性肺炎なのです。

 肺炎というと、高い熱が出たり、激しいせきが出たりするのが一般的。しかし、年をとってからの肺炎は、あまり症状が出ません。突然、呼吸するのが苦しくなり、エックス線を撮ったら、かなり進行した肺炎だったということは、お年寄りにはよくあることです。

 通常の肺炎は、かぜなどをひいた時の喉の炎症が、気管、肺へと、日に日に広がって生じることが多いのですが、誤嚥性-は違います。口の中にいる細菌が、食べ物や飲み物と一緒に、誤って肺に流れ込んでしまうことで起こるのです。若く元気な人なら、何かの拍子に食べ物、飲み物、唾液などが、気管や肺に入りかけても、むせる、せき込むなどで、気管から外に出すことができます。しかし、年を取ってくると、むせる、せき込むなどが下手になるだけでなく、免疫力は落ちてきますので、少しの唾液でも肺炎を生じやすいのです。特に夜寝ている間に、唾液が肺に入り、肺炎を起こすきっかけとなっていることも多いのです。

 予防としては、歯の手入れ、歯周病対策に加えて「カラオケなどでのどを鍛える」があります。お勧めの曲は、石川さゆり「津軽海峡・冬景色」松任谷由実「春よ、来い」松崎しげる「愛のメモリー」米良美一「もののけ姫」クリスタルキング「大都会」など。

 体の中で最もきたないのは口の中で、特に年を取ると、歯周病を持っている確率が80%を超えます。誤嚥性-の予防対策は、口の中をきれいにすること。そして、のどを鍛える、飲み込み力を鍛えるカラオケ、それも、音域の広い曲がいい!

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。