「眠れないときは寝酒がいい」とよく耳にしますが、実際はどうなのでしょう?

 実は、寝酒は、睡眠の質を落とす薬なんです。ということは、熟睡には逆効果ということになります。アルコールを飲むと、アルコール自体が脳に及ぼすリラックス効果に加え、体温が上がった後に下がることになるので、両者の効果により、確かに寝付きは良くなります。しかし、摂取してから3時間ほどたつと、アルデヒドという毒に変わってしまいます。このアルデヒドが交感神経を刺激するため、眠りが浅くなり、すぐ目を覚ましてしまうのです。

 女性の間でよく話題に上る習慣として、「お肌のゴールデンタイム」は、午後10時~午前2時。この時間帯には睡眠を取る重要性がいわれます。人は、お肌のゴールデンタイム、つまり睡眠中に壊れた細胞の修復や再生を行っていると考えられています。その役割を担っているのが「成長ホルモン」。

 成長ホルモンは、寝付いてから3時間の間に大量に放出されます。これを「成長ホルモンのシャワー」といいます。それが行われるのが「お肌の-」と呼ばれる午後10時~午前2時といわれてきましたが、それは間違い。グッスリ寝れば、いつでも成長ホルモンは分泌されるのです。

 話を「昼寝」に移します。「1時間ぐらいの昼寝は健康によい」とよく聞きますが、これはうそ。1時間はちょっと長すぎます。昼寝は30分以内なら熟眠効果もあり、そのあとの仕事のパフォーマンスが向上します。さらに、近年、意外なことに認知症の予防法として注目を浴びているのです。

 毎日、30分以内の昼寝をしている人は、認知症になる確率が5分の1に減り、逆に毎日1時間以上昼寝している人は、認知症になる確率が昼寝をしていない人の2倍になる、というデータがあります(国立精神・神経センターの研究)。その研究によると、10分間の昼寝は、夜の1時間の睡眠に相当。30分以内の昼寝は、日中の作業の効率を高めるのでよいものの、それ以上長く寝ると、夜の睡眠の邪魔をすることになるというものです。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。