すみやかに寝るための10カ条の中に「風呂は寝る1時間前、少なくても30分前までに」があり、その風呂も「38~40度のぬるめ」で「長湯は禁物」です。なぜなら、入浴中に急死する人が全国で年間1万4000人もおり(東京都健康長寿医療センター調べ)、なんと交通事故死亡者の約3倍に当たるのです。

 冬の寒い日などに熱めの風呂(42度以上)に入ると、末梢(まっしょう)の血管が収縮して血圧は上がります。この急激な血圧の変動で、脳卒中や心筋梗塞に襲われる人が多いのです。意外に多い入浴中の溺死。(1)気温の低い日(2)女性(3)深夜から早朝にかけての急死が多く、その大きな原因が長湯とされています。

 長湯で血圧も下がり、体がリラックスし、だんだん眠くなって、そのまま湯船の中で寝てしまい溺死する-というパターンが多いようです。男性より女性のほうが長湯の傾向にあり、特に飲酒後の入浴は避けたほうがいいでしょう。

 また、ほとんどの人が毎日丁寧に体を洗っていると思います。現代は異常なほどの「きれい好き」が多く、ナイロンタオルなどを使って体をゴシゴシ洗う人も多いでしょう。しかし、体の皮膚には「表皮ブドウ球菌」という善玉菌があり、よい香りになる脂肪酸を作り出しています。さらに、皮膚細胞の水分の蒸発を防ぐ皮脂もあります。体を洗いすぎると、そんな表皮ブドウ球菌や皮脂が少なくなり、体臭がきつくなり、乾燥肌になってしまうので、あまりお勧めできません。洗いすぎにはくれぐれも注意してください。

 乾燥肌対策は、湯船に入る前に体を適度に洗うこと。また、42度以上の熱い風呂の長湯は、より皮脂が浮き、皮脂や皮膚の水分を失いやすくなります。お風呂は、38~40度のぬるめのお湯がお勧めで、入浴後に体をふいたあとは、皮膚が乾燥する前、つまり体から湯気が出ているくらいのタイミングで、保湿クリームを塗ることが大切です。

 最近では、1番風呂には水道水に含まれる塩素が多く、乾燥肌を悪化させると考えられています。少しあかが浮くぐらいの2番風呂、3番風呂のほうがいいんです。1人暮らしでどうしても1番風呂という方は、塩素の働きを緩和する入浴剤をお勧めします。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。