健康診断の結果を見て「血糖値が高くて…」と、げんなりしている中年ビジネスマンは多いですが、それでは、血糖値とは何でしょうか。

 私たちが食事をすると、食べ物は胃腸で消化吸収され、ブドウ糖となって血液の中に流れ込みます。この、「血液中に含まれているブドウ糖」が血糖で、どれくらい含まれているかを示す値が、血糖値です。血糖値が食後急激に上昇すると、インスリンというホルモンが膵臓(すいぞう)から分泌されるのですが、このインスリンには血糖を脂肪に変える働きがあります。そのため、血糖値が急激に上昇すると、肥満につながるのです。

 さらに、急激な血糖値の上昇は、心筋梗塞などの発症率を高めることも分かってきました。血糖値の急激な上昇は、肥満だけでなく、血管の老化やさまざまな生活習慣病の原因となっているのです。

 そしてよく言われていることが、この血糖値をコントロールするために、「野菜→汁物→タンパク質(メインのおかず)→炭水化物」の順番でゆっくり(1時間くらいかけて)食べましょうということですが、私は「肉から食べなさい」と言っています。

 例えば、野菜に分類される豆や唐ナス(カボチャ)、ポテトサラダですが、これらには炭水化物が含まれているものも多いのです。一方、肉には糖質がありませんし、多く含まれているタンパク質や脂質は、血糖値の上昇とは関係ありません。

 また、肉を最初に食べることで、血糖値の上昇を抑制するインクレチン(GLP-1)という消化ホルモンの分泌が高まることも、最近の研究で分かったのです。インクレチンの分泌により、胃の働きが緩やかになり、胃で分解された食材が小腸に移動して吸収されるまでの時間が、2倍以上延長することも明らかになりました。

 ですから、「野菜→汁物→タンパク質(メインのおかず)→炭水化物」という食べる順番によるダイエットよりも、肉が最初の方がいいのです。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。