二日酔い防止として、のんべえはありとあらゆる手段を惜しみません。「飲む前に牛乳を飲む」「ちゃんぽんしない」「すきっ腹で飲まない」「水も一緒に飲む」「シジミのみそ汁を飲む」。

 「牛乳を飲む」は、牛乳で胃に膜を張って、アルコールの吸収を妨げるということらしいですが、そのような仕組みはまったくありません。お酒を飲めば、胃にできた牛乳の膜なんかすぐに剥がれてしまいます。ただ、牛乳に含まれているタンパク質は、アルコールの分解を多少は助けてくれるかもしれません。

 よくいわれるのが「お酒をちゃんぽんすると悪酔いする」です。ビールの後に日本酒、続いてワインか焼酎といったように、複数の種類のお酒を交互に飲むと悪酔いするというのですが、これもはっきりした根拠がありません。ただし、ちゃんぽんすると口当たりも変わるため、知らず知らずのうちに限界以上の多めのアルコールを飲んでしまい、飲みすぎて二日酔いになるから、ちゃんぽんはよくないといわれているのだと思います。

 一番悪酔いするのは、短時間に急ピッチでたくさん飲むことで、これは急性アルコール中毒を起こす可能性も高まります。水も一緒に飲むように意識すれば、自然にピッチも遅くなるでしょう。

 普段お酒をあまり飲まない人などは、年末年始などに飲み会が続くと、「肝臓が不安」と感じるのではないでしょうか。よく「アサリやシジミなどの貝類のエキスが、肝臓にいい」といわれています。実際に飲んだ次の日の朝食でみそ汁の具を、シジミにしている人もいるでしょう。

 でも、シジミのみそ汁を飲んだからといって、肝機能が回復するわけではありません。確かに、二日酔いの症状が改善されて気分が良くなったという研究結果はありますが、アルコールの分解を促進したという確固たる研究結果はないのです。では、シジミではない二日酔い対策には、どんなものがあるでしょう?

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。