これからは「ニート」をめざしましょう! と言っても、働かないでブラブラしている、あの「ニート」ではありません。「非運動性熱産生(Non Exercise Activity Thermogenesis)」を略したニートです。

 「非運動性-」とは、運動以外の身体活動によるエネルギー消費のことで、買い物や炊事洗濯などの家事、通勤・通学時の歩行、仕事中の活動などのことです。普通に生活している人は、1日の消費エネルギーの6%が基礎代謝(呼吸や体温調節などの生命維持のために消費されるエネルギー)、10%が食事誘発性熱産生(食事を摂取することで消費されるエネルギー)によるものです。身体活動による消費エネルギーは30%ですが、運動で消費されるのはわずか0~5%にすぎず、残りの25~30%は「ニート」による消費です。

 つまり、日常生活での動きによる消費カロリーは、みなさんが思っているより大きく、できるだけ立ったり座ったりを頻繁にすることで十分ともいえます。この「ニート」が少ない人は、洗い物も自分でやらずに、食洗機を使う。歯磨き、化粧、電話など、日常の行動のほとんどを座って行っていることが多い人です。座ってテレビを見る時間を減らすだけで、活動量が増えて、やせるというデータもありますが、テレビを正しい姿勢で座って見るだけで、横になって見るより1・5倍のカロリーを消費できます。

 日常、ちょこちょこ動けば、多い人で1日800キロカロリーを消費することが可能なのです。成人男性の平均的な基礎代謝が1400キロカロリーですから、これに800キロカロリーを足すと2200キロカロリー。これが特別な運動をしなくても消費できるとなれば、約700キロカロリーの食事を1日3回摂取しても太らない計算になります。

 洗濯物を干す、布団を干す、子供と遊ぶ、電車の中では立つ、エスカレーターではなく階段を使うなどで、ニートを稼ぐことができます。まずは日常の行動を「座る」から「立つ」に変えたり、できるだけちょこまか動いたりすればよいのです。その時、背筋を伸ばせば効果大です。運動不足だけどジムに行く時間がない、だから運動できないという人は、これからは日々の生活でこまめに動くことを心がけてみましょう。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。