スマートフォンやパソコンは、今や生活に欠かせない便利な道具です。しかしこれらデジタル機器に頼りすぎると、記憶力、思考力が低下するいわゆる「デジタル認知症」になってしまうこともあるのです。

 認知症に似た症状ですが、本人も周囲も自覚しないまま症状が悪化して、本当の認知症になる可能性もあります。インターネットやスマホなどを毎日6時間以上すると、快感や意欲を感じる脳内物質「ドーパミン」が過剰分泌されて脳細胞が死滅し、認知機能が低下してしまいます。デジタル機器には依存性があるため、これらの症状にさらに拍車を掛けるのです。

 最近の調査では、10~20代のスマホユーザーの1割以上が“記憶障害”と診断されました。脳内で記憶をつかさどる「海馬」という部位が衰えたからです。記憶障害ほど深刻ではないにせよ、スマホユーザーの60%以上が「最近モノ忘れがひどくなった」と、まるで高齢者みたいな感じを抱いているそうです。統計によると、デジタル認知症のうち14%が、より症状が悪化し専門の医療機関で治療が必要なレベルの「若年性認知症」と診断されるそうです。

 では、デジタル認知症を予防するにはどうすればいいのでしょう? 4つの方法を紹介します。(1)記憶力を使う遊びや学習を積極的に行う。筋肉と同じで脳もよく使うと鍛えられ、使わないと衰えます。ですから、語学の勉強(英単語を覚える)、トランプの神経衰弱など、記憶力を刺激することを通して海馬を鍛えましょう。(2)読書をして自分の言葉で要点をまとめる。専門書でもビジネス書でも、読書したら自分のオリジナルの文章で要点をまとめる訓練をしましょう。読解力・作文力・発想力などが鍛えられます。(3)人と直接会ってコミュニケーション能力を磨く。スマホのチャットアプリ(LINE、ツイッターなど)でしか、他人と交流できない若者が増えてきています。実際に相手の目を見て会話し、感情を読み取りながら話す訓練をしましょう。(4)意識的にスマホと距離を置く。せめて「食事・トイレ・風呂・寝室ではスマホはいじらない」など、できる範囲で距離を置くことを心掛けましょう。たまには視覚以外の五感も刺激してくださいね。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。