健康な生活には、必要な量の各種ビタミンの摂取が不可欠。その中の1つ「ビタミンD」について、現代の日本人の多くは慢性的に不足しているという報告があります。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、成人について1日のビタミンD摂取目安量として、最低5・5マイクログラム(1マイクログラムは100万分の1グラム)、上限50マイクログラムを推奨しています。ビタミンDは、骨を強くし、歯周病予防、くる病予防のほかインフルエンザ予防にも効果があるともいわれるほど大事なものです。

ビタミンDが不足している背景には、ビタミンDが含まれる食材の摂取不足があります。ビタミンDが含まれる食材は、キノコ類、きくらげ、あんこうの肝、魚介類(シラス、イワシ、ニシン、サケ)などが挙げられます。サプリメントの摂取でも構いません。しかし、ビタミンDを十分に摂取できなくても、適度の日光浴で体の中で作ることができるのです。日光からの紫外線を浴びると、それがシミやしわの原因となるとして、避けられる傾向がありますが、まったく日を浴びない状況も好ましくありません。

環境省によると、体に必須なビタミンDを作るのに必要な日光浴は、なんと、両手の甲の大きさだと日なたで約15分、日陰だと約30分のみ、ということです。WHO(世界保健機関)の調査によると顔と両手、両腕で、夏季なら約5~15分の照射時間が必要としています。

また、国立環境研究所と東京家政大学の研究チームが、健康な生活を送るのに必要な摂取量を体内で生成する場合の日光浴の時間を、日本の3地点(札幌、つくば、那覇)で割り出しています。それによると、両手、顔を晴天日の太陽光に露出した場合、紫外線の弱い12月の正午では、那覇で8分、つくばで22分、緯度の高い札幌では76分となっています。

過度に浴びれば美容上のトラブルだけでなく、皮膚がんになる可能性も高まりますので、全身で浴びる必要はありません。朝、カーテンを開けて、手の甲ほどの大きさをお日さまに15分ほど当てる習慣を、持ちたいものです。

◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビ、ラジオでコメンテーターとして出演多数。テレビ朝日系の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」の医療監修をドラマ立ち上げの時から務め、今年10月に新シリーズを迎える。気分転換は週2回のヨガで、15年あまり継続。インスタグラムdoctormorita、ホームページmorita.proなどで情報発信中。