頻尿の主な原因としては、ほかに「骨盤臓器脱(ぞうきだつ)」があります。その説明の前に、まず「骨盤底」についてお話しします。膀胱(ぼうこう)や子宮、直腸など骨盤内にある臓器は重力に引かれて下がって来るため、逆らってそれらを支える組織、筋肉のことをいいます。骨盤臓器脱とは、この骨盤底が妊娠、出産、加齢による筋力低下などで緩んで、骨盤内にある臓器が膣(ちつ)からはみ出してくる症状です。脱出した臓器によって、「膀胱瘤(りゅう)」「直腸瘤」「子宮脱」などと呼ばれています。

何か、股間に違和感や不快感がある、お風呂で洗っていると、何か出ているものに触れた、午後になるにつれて症状が強くなる、などの症状があれば骨盤臓器脱が疑われます。下がって来た臓器に尿道が圧迫されて、尿が出にくくなったり、頻尿や尿失禁を起こすことがあるのです。

軽度の骨盤臓器脱の場合、トイレに行く回数が増える頻尿と「腹圧性尿失禁」を合併する頻度が高くなります。この場合の治療ですが、膣(ちつ)や肛門を締めたり緩めたりする「骨盤底筋体操」で改善できます。また、中等度以上では尿排出障害と、強い尿意が起き我慢できなくなったり、頻尿、尿もれなどの過活動膀胱症状を合併する頻度が高くなります。治療としては既に膣から出てしまっているときは、子宮の位置を直す器具「ペッサリー」を挿入したり、クッションで下垂した臓器を支えたり、根治を目指して手術を行います。

手術で膀胱瘤が治っても、次に直腸瘤が起きる場合もあるため安心はできません。肥満や便秘の解消に努め、骨盤底を傷めないよう気をつけなければなりません。

さらに、頻尿の原因には「心因性」のものもあります。緊張するとトイレに行きたくなる症状が頻繁に起こったり、悪化するとたいして緊張しなくてもよい場面でも尿意が起きたり、頻尿の原因となる疾患などの異常が見つからない場合は、心因性と診断されます。「トイレに行きたくなったらどうしよう?」と思うだけで尿意を感じたり、逆にいつでもトイレに行ける環境では尿意が起こらないこともあります。「抗不安薬」などで改善するものの、緊張と排尿行為を結び付けない訓練も必要です。