コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。私たちは感染予防で最善の注意を払いながら毎日を過ごしています。ストレス社会の今、心と体の健康状態をいかに維持するか、医療ライターのしんどうともが考えていきます。

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禅僧で精神科、心療内科医の川野泰周さんは、著書「心と身体の正しい休め方」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で心の疲れの一因に「自己肯定感の低下」があると指摘する。

「現代人が自己肯定感の課題を抱えているというのは、私たち自身が外からの評価で自分の価値をつくることに慣れきっているためだと思います」

たとえば、会社で業績が上がって自分の評価が上がれば自尊感情は大きくなり、あたかも自分の価値が上がったように感じるもの。しかし、自己肯定感はそれで説明しきれるといったものではないという。

川野さんによれば、自尊感情、つまりプライドは、他人と比べることで生まれるもの、あるいは、他人の目線からでなければ芽生えることがないが、大事なのは“自分自身”と説く。

「プライドと自尊感情はまったく違うものとして扱われています。自慈心(じじしん)といって、自分自身に対する優しさや慈しむ心が自尊感情とは別にあるといわれているのです」

この「自慈心」を自分の中で育めている人は、たとえ他人からネガティブな評価をされてもプラスに変えられる。

「自己肯定感は本来、自慈心と自尊心のふたつで成り立っており、自尊心ばかりでは何か注意されるとガタガタと自分が崩れてしまう。仕事を辞めてしまったり引きこもってしまったりなど現代社会に大きな影を落としていると考えられます」

自己肯定感は自慈心と自尊心のバランスが大切なのだ。