■変形性膝関節症の治療

今回から数回にわたり、変形性膝関節症の治療について連載します。

変形性膝関節症の治療の目的は「痛みなどの症状改善」と「関節変形の進行予防」の2つに大きく分けられ、この目的を達成するための治療法には、保存療法と手術療法があります。

保存療法は、運動療法と薬物療法を軸として、装具を使用したり物理療法(電気治療など)を行ったり、患者さんの状態に合わせて総合的に実施します。そして保存療法が無効な場合には手術療法を選択します。

手術療法では、多くの場合で人工膝関節置換術を行います。人工膝関節には、膝の内側と外側の両方を一塊で取り換える全人工膝関節置換術と、比較的変形の少ない患者さんで片側のみ取り換える単顆(たんか)人工膝関節置換術があり、前者が一般的です。

また、年齢が比較的若い方に対しては、人工膝関節置換術の前に膝関節を温存する高位脛骨(けいこつ)骨切り術なども行われています。これらの治療法の選択は年齢、関節の状態、健康状態などにより総合的に決定します。

人工膝関節の寿命(対応年数)は体重や活動性にもよりますが、15~20年と言われており、50~60代前半など比較的若いうちに人工関節にした場合、20~30年たってから再置換術を受ける可能性が高くなります。日本人の平均寿命は男性で81・41歳、女性で87・45歳(2019年厚生労働省の簡易生命表より)ですので、人工関節の耐久性を考慮すると、60代後半から70代以降で人工関節にすることが推奨されるところです。