■痛みとは?

みなさんが整形外科で訴える症状で一番多いものは痛みですが、痛みとは一体何でしょうか。国際疼痛学会は、痛みを「感覚かつ情動の不快な体験」と定義しています。

これは「感覚が不快」であることと「情動が不快」であることの両方を感じて、初めて痛みとして成立するということです。例えばビンタをされたとしましょう。全く知らない人からビンタを食らったら頭にきますよね。「痛いなー、このやろー!」と思いますよね。ビンタされたという不快な感覚と「痛いなー、このやろー!」と思う不快な情動が生じ、痛みが成立します。

しかしビンタで有名なアントニオ猪木さんに、ビンタして欲しくてビンタされた場合はどうでしょうか。ビンタをされたら同じようにビンタの感覚が走ります。しかし「ありがとうございます!」と喜ぶ人が多い…。

この情動は不快ではなく、むしろ快感となり、前述の痛みの定義には当てはまりません。つまり本人の気持ち次第で痛みとなったりならなかったりするのです。

痛みが長く続くと慢性痛に移行していくことがありますが、慢性痛になると痛みはさらに取れにくくなります。痛みを気にしすぎる人、痛みのせいにする人、痛みをゼロにすることにこだわる人などは、不快な情動が現れやすく、慢性痛に陥りやすいと考えられます。

この慢性痛から抜け出すには、痛みに固執せず、痛みのない状態と同じようにできるだけ体を動かし、痛みのフォーカスをずらすことが大切です。