1999年に医療ロボット「ダヴィンチ」が誕生。日本の病院でも早くに導入しようとした施設があります。その年に九州大学病院と国立循環器病研究センターが購入し、それ以降は、商社が導入に失敗して進展のないまま数年が経過。その間、九州大学病院だけは消化器外科が胆のうなど消化器の手術を30件くらい行いました。
そんな99年、私は世界で初めて「完全内視鏡下手術」を成功させました。もう少し詳しく話すと、「完全内視鏡下冠動脈バイパス手術」です。冠動脈バイパス手術(CABG)は心筋梗塞や狭心症に対応する手術。冠動脈が狭まった、あるいは詰まった箇所に迂回(うかい)して血管をつなぐ手術。迂回路を作るので「冠動脈バイパス手術」です。
この手術は人工心肺を使わず、胸の横に1センチ程度の穴4つから内視鏡(胸腔鏡)を挿入し、心臓を手術する術式です。普通の手術であれば、胸骨を縦に25センチ程度切開して行います。内視鏡での手術は、患者さんの身体への負担が小さく、早期に社会復帰ができます。もちろん、手技の猛特訓を行い、「できる」と確信した上で患者さんの承諾を取りつけ、世界初の手術に成功しました。患者さんは術後3日で元気に退院。これをNHKがニュースで大きく取り上げて注目されました。また、医学雑誌では最高峰の「ランセット」誌に世界初の心拍動下完全内視鏡下手術として掲載されました。
そのタイミングで、ダヴィンチを使った心臓ロボット手術を「心臓弁膜症」に行った米国の外科医がいることを知ったのです。日本の心臓外科医もロボット手術で後れを取ってはいけない、と思い、私はダヴィンチを大学病院に導入するために動き出しました。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)
◆渡邊剛(わたなべ・ごう) ニューハート・ワタナベ国際病院 総長・理事長・院長。84年金沢大学医学部卒業。医学博士。心臓血管外科学会専門医。日本ロボット外科学会理事長。Best Doctors in Japan 10~21年選出。ロボット心臓手術数は年間約200例で、3年連続世界最多(19年~21年)。19年の心臓弁膜症手術数(494件)は日本最多。心臓手術の手術成功率99・6%以上を維持する。心臓病に苦しむ患者向けに無料ネット外来を開設して15年以上、相談者数は1万件以上。手術のために国内外から患者が来院している。

