日常の口腔(こうくう)ケアに使用するツールは実にさまざまですが、歯科医である私が歯ブラシ以外に必ず使う三種の神器は「歯みがき剤」「デンタルフロス」「洗口液」です。

2019年に発刊された書物によると、日本における歯みがき剤の使用率は94%、デンタルフロスが28%、洗口液は39%と記載されていました。かたや諸外国ではどうかと調べると、文化的な背景や歯科医療制度、教育や所得等の問題によって異なることがわかります。

かつて「フロス・オア・ダイ(フロスか死か)」というセンセーショナルなキャッチコピーがちまたを賑わせたアメリカでは、歯みがき剤の使用率が他国と比較して低い傾向にあるものの、デンタルフロスは圧倒的に高い数字でした。

WHO(世界保健機関)が「東南アジアで口腔保健プログラムを積極的に導入した国」として評価しているタイは、オーラルケアの意識が高い国として知られています。当然どのツールも非常にコンスタントに使われていますが、洗口液の使用率が68%というのは驚異的です。タイでは特に学校歯科保健が充実しており、虫歯予防に有効とされるフッ化物洗口が全国規模で実施されているそうです。小さいうちから「予防のために洗口液でゆすぐ」習慣が徹底している国ならではの結果だとうなずけます。

日本において洗口液の普及率が低い理由は、こうした学童期への疾病予防介入が地域や学校によってまちまちであるからかもしれません。

患者として受診した際、マウスウォッシュの類いを歯科医院で勧められた経験のある人自体も少ないです。つまり私たち歯科医療従事者がそのメリットをきちんと理解していない点もあるのだと思います。欧米のように、相手とのあいさつの距離が近く口臭を気にする文化がなかったことも背景のひとつなのでしょう。