歯ブラシだけでは全体の6~7割程度の汚れしか取れません。残りの掃除も徹底すること、つまり歯間ケアが必須だという話はある程度浸透してきました。ところが時々「デンタルフロスを入れたら血が出たのでやめてしまった」という患者さんに遭遇します。これは逆効果な行動なのですが、なぜ血が出るかという理屈がわかっていなければ仕方がないことなのかも知れません。

プラーク(歯垢=しこう)とは、細菌が排せつしたネバネバ成分が層を成して堆積しているバイオフィルムの状態です。乳白色で歯の色に似ているため、磨き残しとして歯の周りに付着しやすいという特徴があります。時間の経過とともに成熟し、病原性が高くなることもわかっています。

舌の表面に堆積したバイオフィルムは舌苔ですが、同様に乳白色をしているため、こちらの方が視覚的にわかりやすいかも知れません。どちらも、細菌が増える段階で不快なにおい物質を放出するため、口臭の原因にもつながります。つまり毎日のケアの目的は、早い段階でこのバイオフィルムを取り除くことにあるのです。

デンタルフロスを入れたら出血するという現象は、歯と歯の隙間に病原性を持つバイオフィルムが鎮座していることを示します。歯ぐきがなぜピンク色をしているかというと、血管が通っているからです。体中に酸素を届けたり、外敵とたたかう免疫成分を送り込むのが血管の役割です。つまり、バイオフィルム内の細菌によって産生される毒素や炎症物質によって局所が脹れて血が出るのは、体が正常に免疫応答している証拠です。

血が出たからと言って掃除をストップしてしまったら、体を刺激している諸悪の根源を追い出せません。血が出なくなるまでケアを続けるのが、正しい行動といえます。歯みがき剤や洗口液は、殺菌や抗炎症成分が配合された製品がおすすめです。