アルツハイマー型認知症は、日本の認知症患者の6~7割を占める病気です。すべての要因が解明されたわけではありませんが、遺伝や生活習慣、炎症が関与しているとおおまかに考えられています。アルツハイマーは、脳にアミロイドβというタンパク質がたまり、神経細胞が傷つくことから始まります。このメカニズムに、とある歯周病菌が深く関わっていることが明らかになってきました。
口の中には500~700種類の細菌が常在していますが、歯周病を引き起こす病原性を有した細菌は十数種類程度です。またその中でも、歯周病菌(重度歯周炎を引き起こす主役となる菌)と、歯周病関連菌(単独ではさほど強い病原性を示すわけではないが、他の菌と協力し合い歯周病を悪化させる共犯者)に分けられます。弱い菌は低層に住み、凶悪な菌は最上階に君臨する。なんとなくタワーマンションを想像してしまうような話なのですが、歯周病発症に関わる細菌は、見事なピラミッド状の階層構造を呈しています。低層だけの集まりは平和ですが、上層階のメンバー、すなわち高病原性細菌が現れ始めると治安が悪くなる。こうしたシフトチェンジが歯周病を重症化させることもわかってきています。
歯周病菌のトップオブトップと呼ばれるPorphyromonas gingivalis(P.g.菌)は、もれなくアルツハイマーにも関わっています。P.g.菌自体が血流に侵入し脳の組織から検出された報告を皮切りに、多くの研究が積み上げられてきました。P.g.菌が産生するジンジパインという酵素が神経細胞を傷害し、アミロイドβ産生を誘導していることが示唆されています。本来であれば、口の中を隅々まで磨けば退治できるはずの細菌なのに、居心地のよい環境をつくると退治するのが大変です。歯科医療者との二人三脚はもちろん、普段のセルフケアにも相当力を入れないと体があっという間に負けてしまうのです。

