歯を抜いたところを何で補うかという相談はとても多いです。私はもともと大学病院で部分入れ歯を専門に学んでいたので、初診の際にすでに歯が無いという方ばかりを最初は担当していました。

適合の良い入れ歯を作れば、機能はある程度回復します。ところが実際にそれでどのくらいかめているかという検査をすると、残っている天然の歯とは大きく異なります。失った歯の本数や範囲によっても変わりますが、入れ歯が負担できる力は、天然の歯の5分の1から10分の1程度になることが研究でも明らかになっています。

そもそもが、歯を抜かなければならなくなった理由をきちんとひもとかなければなりません。奥歯から失われていくことが多いので、磨き残しが出やすく、虫歯や歯周病が進行してしまったパターンが大半です。しかしながらその中に、力のかかり具合という要素が占める割合が意外に多いことは知られていません。入れ歯にした途端、以前と同じようにかめない、歯ぐきが痛い、よく外れるといったお悩みを抱えた方は沢山いらっしゃいます。

入れ歯の材料にはさまざまなものがありますが、保険適用内のものはとてもシンプルなつくりです。ベースと人工歯に主成分は樹脂(プラスチック)です。ある程度の厚みを付与しなければ割れてしまいますから、どうしても違和感は出ます。私たちの口の中は、髪の毛一本入っても気持ち悪いのですから当然です。

樹脂部分に金属製のバネを数本付け、残っている歯に引っかけて外れないような工夫をします。このため、残った歯のコンディションにも左右されます。入れ歯のメリットは、抜いた部分をそのまま簡便に補えるという点ではあるものの、残っている歯が弱っていたり、ガタガタでは厳しいのです。適合や予後を良くするために、周りの歯をある程度削って整頓する必要も出てきます。