長年話す仕事をしているので、医療業界向けにコミュニケーションスキルを鍛えるような講義を担当することがあります。クリニックには悩みや不安を抱えて来られる方も多いので、おもてなしの要素も少なからず必要になるからです。

清潔感や柔らかい表情を醸し出すためには見た目の印象を整えなければなりません。アメリカの心理学者アルバート・メラビアンによって提唱された「メラビアンの法則」は、非言語情報の重要性を示した分析として広く浸透しています。これによると他人に与える影響は、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%となっています。つまり、物事を伝えたい時には、言葉以上に声の調子や表情が大切であるという知見です。

しっかりした声で滑舌良く話す人は、印象が若々しく爽やかです。テレビでニュースを読むアナウンサーたちの心地よい発音は、年齢が上がっても変わりません。舞台裏で時々、発音練習の場面に遭遇しますが、舌を意識して口をしっかり開くというポイントを教えていただいたことがあります。

喉頭(のど)のおくにある「声帯」は左右一対のヒダ状構造をしています。呼気(肺が送り出す空気)で振動し、「音のもと」が作られます。そこに舌や唇、口蓋といった器官が関わり、「言葉の音」が出来上がるしくみです。この中で特に重要な役割を担うのが「舌の力」です。老化によって舌が衰えると、連動して声帯の位置が下がり、たるみます。声帯がぴたっと閉じていれば発声ははっきりしますが、たるんだ声帯ではハリのない老け声になってしまうのです。

現代の歯科医療では、通常の検診に加えて、口の機能を調べる検査項目も組み込まれるようになりました。歯や口元をきれいに保つだけでなく、トレーニングによって声の若返りも可能なのです。