鼻で吸って吐く「鼻呼吸」が、人間にもともと備わっている呼吸様式です。鼻の中には鼻毛があり、空気中の異物をからめ捕るフィルターの役割をしています。体を外敵から守る、わかりやすい門番です。ところが老若男女問わず多くの人が、いつのまにか「口呼吸」が習慣になっている現実があります。

研究によってばらつきはあるものの、子どもの場合は特に高い割合で認められています。アレルギーを起こす、風邪をひきやすいなど、短期的な問題だけでなく、顔貌や口腔(こうくう)の成長発育に悪影響が及ぶ点はあまり知られていません。口をぽかんと開けていれば、唾液も流れにくい環境なので虫歯リスクも上がります。嗅覚異常や姿勢への影響も確認されており、とにかく気づいた時から改善するのが得策です。

大人の場合、睡眠時無呼吸、集中力あるいは注意力の低下、認知症やうつといったあらゆる疾患リスクが指摘されています。虫歯や歯周病といった口のトラブルのみならず、もはや全身を不健康に変えてしまう要素が満載なのです。

極端な上顎前突(出っ歯)など、骨格的な異常がないにもかかわらず口呼吸をしてしまう方の特徴として、口唇閉鎖力(唇を閉じる力)が低下している可能性が高いです。特に60歳前後から低下する傾向にあるようです。

口に貼って寝るテープ、鼻腔を広げて空気の通りを良くするシールなど、さまざまなグッズがちまたにあふれています。学術的なエビデンスは乏しいものの、一時的に使ってしのぐ分には問題ありません。長期的な改善を望むのであれば、口輪筋(口の周りを放射状に走る筋肉)をはじめとした筋群の総合トレーニングが理想的です。歯科医院では、検査した上で口唇閉鎖トレーニングなどの筋機能訓練を受けることができます。保険適用になる年齢層が拡大されていますので、是非相談してみてください。