多くの患者さんを拝見していると、同じ年齢でも口の環境がまったく異なるという事実を学びます。当然、トラブルの原因がどこにあるのかというジャッジも早くなります。

さまざまな研究や調査によると、日本人が最初に歯を失う世代は40~50代が最も多く、その理由の大半は「歯周病」に起因するものです。デンタルバイオフィルム(歯に付着したぬめり汚れ)の中で細菌が繁殖し、これに体が反応し炎症が起きた状態が歯周病の始まりですが、年齢と共にあらゆる抵抗力が弱まることは紛れもない事実です。このため、年を重ねると歯周病菌の威力に負けてしまう人が出てくるのです。

かたや若い世代ではどうかというと、20~30代で抜歯を経験した方のほとんどが「虫歯」のよるものです。

学童期におけるヘルスプロモーションが奏功し、小学生で虫歯が発見されるお子さんは珍しいという時代になりました。平均値よりも虫歯本数が多く、保護者に説明しても受診拒否されるようなケースでは、医療従事者が育児放棄を疑い通報する義務があります。国や自治体が一丸となって施策を展開し、口の健康が守られてきた背景があるにも関わらず、20代で何本も歯を抜くことになったという患者さんは一定数います。これはなぜかというと、虫歯の発症はほぼ生活習慣に左右されるからです。

中学生までは虫歯ゼロで来たのに、好きな時間に好きなものを飲み食いする高校生になったら虫歯ができて銀歯になった、社会人になったらそれが外れて抜歯になった、という流れは決して珍しくありません。そして、こういう理由で歯を失った方にこそインプラント治療を選択して欲しいと思っています。入れ歯やブリッジは他の歯に力の分散を委ねざるを得ず、寿命を縮める可能性が否めないからです。治療費が唯一のネックではあるものの、投資する価値のある存在です。