<ソフトバンク12-5オリックス>◇27日◇みずほペイペイドーム
笑顔で勝利のボールをミットに収めた。試合フル出場はいつ以来だったか。もうグラウンドに立つことがない。それでもソフトバンク中村晃の顔には寂しさよりも楽しさが感じ取れた。
プロ初出場から5626日。最後の勇姿も中村晃らしかった。初回に中堅へ二塁打を放った。143キロの直球をはじき返し好機拡大。球場のボルテージが最高潮となったのは7回1死一、二塁。マウンドにはホークスでドラフト同期だったオリックス岩崎翔が上がった。直球勝負の3球目。150キロのまっすぐを捕邪飛。快音を響かせることはできなかったが、笑って岩崎と抱擁した。
19年間のプロ野球人生にピリオドを打った。長いようで短い。思い返せばアッという間だったとスピーチで言った。泥と汗にまみれる野球人生だけではなかった。自律神経失調症を患い、苦しんだ。昨年は故障禍のチームにあって4番打者としても活躍。シリーズ直前に腰部椎間板ヘルニアでリタイア。11月にメスを入れると退院日に父親がこの世を去った。いろんな意味で再起をかけた2026年シーズンだったはずだ。
人生の針路は自ら決めなければならない。今季限りでの「引退」を決断すると、ファームで若鷹とともに汗を流し続けた。積極的に食事に誘い、フレンドリーに触れ合った。引退表明後も現役未練の葛藤もあったが「ホークスのレギュラーでは無理」と力不足を悟って迷いを断った。
代名詞ともなった登場曲(エド・シーランのshape of you)は憧れの人の登場曲だった。ドジャースなどで活躍したジャスティン・ターナー選手のプレーに引き込まれ、彼が使用してきた曲を登場曲にした。今年11月で42歳になるターナーは、メキシカンリーグでまだプレーしている。現役を併走することはかなわなかったが、社会貢献活動にも積極的でロベルト・クレメンテ賞も手にしたターナーは尊敬の人だった。
「野球だけでなく、人間的にも立派なんで。まだプレーしているんですよね。すごいです。そういうところも憧れます」。中村晃は照れくさそうに話してくれたことがあった。
将来の夢はホークスの監督になること。「言うだけはただなんで」と、また笑った。現役通算は1522安打で終わったが、人生の快打はまだまだ連発できるはずだ。【佐竹英治】(ニッカンスポーツ・コム/プロ野球番記者コラム:CATCH!!)







