ここに来て“名言”が飛び出した感じだろうか。6回、犠打のサインが出た元山飛優に対し、主将・坂本誠志郎がかけた言葉だ。元山は前日の9回に犠打を失敗。この日は4回、痛恨の適時失策を記録していた。そして、また犠打を試みる場面だ。

「死ぬ気で(バントを)決めてみい。死なんから!」。関西人同士ならではのフレーズで坂本が元山に気合を入れた。そして成功。その後、坂本がダメ押しとも言える適時二塁打を放ったところで元山は泣いたという。

「ミスしたくてしてるワケじゃないし。みんなでカバーすればいいし、飛優にカバーしてもらっているミスもみんなにあるとおもうし」。前日、宿舎でも元山を励ました坂本はこの日、そう言った。いい話だ。

そんな試合、点差をついた終盤を見ながら考えていたのはこういうことだ。「石井大智は投げないかな」-。前日、DeNA宮﨑敏郎に逆転2ランを喫した石井の、間を置かないリベンジを期待したのだ。

しかし、石井の出番はなかった。投手が打たれるのと野手の失策は意味合いが違う。それでも、やられたらすぐやり返したいというのは人情だ。試合後、石井に少しだけ聞いてみた。この試合で投げたかったのでは?

「う~ん。難しいですね。今、うまくいっていない部分もあるんで…。当然、早く投げたいという気持ちはあります。でもまた同じようなことを繰り返したらというのも…」

とにかく真面目な男である。率直な気持ちを口にしてくれたと思う。気持ちだけでは通用しない。プロは甘くないということだろう。それでも今後に向け、石井の存在は重要になるはず。ここから2日間、ゲームがないだけに点差があった8回、あるいは9回に姿を見たかったのだ。

こちらの願望だけでもないと思う。クローザーだった指揮官・藤川球児もそういう考えは持っているはず。前監督の岡田彰布(オーナー付顧問)も同じような見方をしていた。それでも、このギリギリの場面では難しいのかもしれない。

この時期まで来て、優勝の行方が決まっていないという状況はいろいろな面できついのだろう。それでも、この勝利で、それを、かなりたぐり寄せたはず。週明け、甲子園に戻る。より多くの選手がいい顔で“その瞬間”を迎えてほしい。そう願うのである。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 7回表阪神無死一、二塁、元山飛優は送りバントを決める(撮影・浅見桂子)
DeNA対阪神 7回表阪神無死一、二塁、元山飛優は送りバントを決める(撮影・浅見桂子)