24年シーズンもいよいよ終盤、ヒリヒリする展開に突入したドジャース大谷翔平。彼の今まで見たことも無いシーンや表情、舞台裏を、8月後半に再渡米したカンビンことニッカンスポーツ・カメラマン菅敏(すが・さとし)が選りすぐりの写真とともに語ります。
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野球カメラマンにとって、雨でずぶ濡れになることや、猛暑、極寒の中での撮影はもう慣れたものです。しかし、どうしても慣れることができないのがファウルボールの恐怖です。ファウルボールは、大ケガや機材破損のリスクが常につきまとい、一瞬の油断が命取りになることさえあります。
過去に、シアトルでイチローさんを取材中、お腹にファウルボールを受けたことがありましたが、最も危険だったのはシカゴでの出来事でした。ダルビッシュさんの取材中、シカゴ・カブスのアンソニー・リゾ選手の放った強烈なファウルボールが、私のこめかみを直撃したのです。あの時の痛みは今でも忘れられません。急いでMRI検査を受け、大事には至りませんでしたが、その後2週間は口を開けるのも困難でした。
ファウルボールの危険を最も理解しているのは、実は選手たち自身です。特に、大谷さんはその意識が高く、ファウルボールがベンチやスタンドへ向かうと、毎回大声で危険を知らせ、無事を確認してから再び打席に戻ります。自分の打球の威力と速度を知っているからこそ、こうした行動ができるのでしょう。
8月8日、ドジャースタジアムでのガーディアンズ戦でも、そんな大谷さんのプロ意識に救われる瞬間がありました。一塁側カメラマン席から大谷さんを撮影していると、フルスイングされた打球がファインダー越しにこちらに迫ってくるのが見えました。危険を知らせる大声が聞こえた瞬間、反射的にカメラを守り、直後に耳のすぐ横を「シューッ」という音を立てながらボールが通過していきました。振り返ると、2列目の台の上で撮影していた現地カメラマンの足に直撃し、すぐにトレーナーさんから手当を受けていました。彼女は撮影を続行していたものの、帰り際に痛そうに足を見せてくれ、そこには真っ青に腫れた足がありました。ほんの少しの打球のズレがあれば、今ここにいるのは私だったかもしれません。
カメラマンとして良い写真を撮るためには、リスクを承知の上で選手に近づき、シャッターチャンスを逃さないことが使命です。しかし、時に身を守ることを後回しにしてしまう瞬間もあり、今回のような出来事があると、その危険を再認識させられます。
その日の夜、ホテルに戻って試合の映像を確認すると、危険を知らせるために大声で叫び、その後、安堵のように天を仰ぐ大谷さんの姿が映っていました。近年、メジャーリーグ球場では安全対策が強化され、観客席やカメラマン席の前にはネットが設置され、ファウルボールによる事故を防ぐ努力がなされています。それでも、大谷さんのように、ファウルボールの危険をいち早く察知して声を上げてくれる姿には、感謝の気持ちが湧き上がります。その心遣いは、まさにプロアスリートの鏡だと思わずにはいられません。
【カメラマン・菅敏】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「カンビンのWEEKLY SHO!Time!!」)





