オーナー陣がロックアウトを通告して99日目。新労使協定の交渉が終結した。オーナー側の最終提示にシャーザー(メッツ)ら選手会を率いる執行役員8人は全員が反対票を投じ、徹底抗戦の構えだった。だが、各30球団の選手会の意思は承認26票、反対4票(ヤンキース、メッツ、アストロズ、カージナルス)。「26対12」の多数決で民主的に妥結した。交渉を動かしたのは、ファンの前でプレーすることを望む選手の強い思いだった。
これまでの対面交渉に列席した執行役員全員が反対票を投じたように、折衝は金銭面の条件だけでは測れない領域まで達していた。再三のように「デッドライン」を変更したあげく「上から目線」で譲歩を迫るオーナー側の姿勢に不信感が募り、態度を硬化させた。ロックアウト後、オーナー側が代替案を持って再交渉に応じたのは47日後。再開後、暗礁に乗り上げた3月1日にはマンフレッド・コミッショナーが開幕から2カードの中止を発表。会見の際、笑みを浮かべたことが、さらに不信感を増幅させた。前日9日には、水面下で162試合実施の可能性をちらつかせる一方で、さらに2カードの延期を正式に発表した。交渉の駆け引き以前に「前言撤回」「朝令暮改」が続く球界トップの無責任な言質を、選手会の誰もが信用できるはずもなかった。
今回の提示を選手会が拒否したら、4月中の開幕も危うかったに違いない。本来なら選手会はオーナー側の提示を承認する形ではなく、自らの提示を認めさせる形を望んでいたに違いない。ただ、現コミッショナーを相手に「真剣勝負」を挑んでいても話は進まない。選手会は「Baseball is back」を合言葉に、ほぼ諦めに近い状況で現状打開にかじを切った。
今回の労使紛争は収束したが、多くの懸念は消えていない。妥結後、マンフレッド・コミッショナーは「我々は(再三変更した)デッドラインを効果的に使った」と、耳を疑うようなコメントを残した。交渉事に駆け引きは必要でも、双方の間には信頼感も協調性も存在しない。みじんの誠意も感じられない球界トップの言葉を選手やファンはどう受け止めるのだろうか。【MLB担当=四竈衛】



