西武は勝てなかった。しかし“エース”のその姿に奮起しない者はいない。

隅田知一郎投手(27)は試合終盤、左腕に三角巾を施した状態で西武ベンチにいた。アイシング、球場外での治療。それを済ませた上で、ベンチに戻った。

初回、ライナーが左前腕に直撃し、負傷退場。治療へ向かえば、必ずしもベンチへ戻らねばならないという義務も規則もない。それでも隅田は戻った。なぜ。

「はい。もう勝つしかないんで。まぁ、今できることは応援だと。(腕は)今は圧迫してるんで。できることはやって、ベンチに行ったっていう感じです」

直撃の後は「冷や汗出てきて、折れたなと思いました」と振り返る。そしてベンチ内で悔しそうにグラブをたたきつけた。「事故なんでしょうがないですけど、僕の大事な左うで、商売道具なんで。どこにもぶつけられない感情が…。打った小深田さんはナイスバッティングなので」。

3時間以上たって、穏やかな表情と声で振り返った。診断結果は打撲。「当たった時と比べると大丈夫です」と言った。

今やチームの大黒柱に近づきつつある。誰もが気になるのが今後、とりわけポストシーズンで登板できるかどうか。首脳陣やトレーナー陣も交えて慎重に判断することになるとみられるが、隅田はこの夜時点ではこう表現した。

「まぁ、気持ちは切れてないんで。もう、できることを尽くして、1日でも早く復帰できるように、っていう」

時にハッキリとした言葉で、チームの強く明るい未来を思い、己の責任も果たしてきた。この夜の彼の姿に響かねば、日本一の夢には届かない。【金子真仁】

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