政界地獄耳

「首都機能移転」今までとは別のアプローチ/地獄耳

★最近頻繁に開かれる全国知事会。政府のコロナ禍対策を横目に、現場の実務を取り仕切る都道府県知事の役割の大きさを再確認するが、4日、同会は新型コロナウイルスの感染防止と経済再生の両立に向けて「日本再生宣言」を打ち出した。静岡県知事・川勝平太は「地域から日本を再生するためには、アフターコロナの日本を見据えなければなりません。この際、東京一極集中を打破する。今こそ東京中心の時代に終止符を打たなければなりません」と訴えた。

★テレワークが一挙に進み、リニアモーターカーをわざわざ建設しなくともネットで打ち合わせ、リモート会議などリニアより早くできる作業を駆使すれば東京一極集中の必要などなく、今こそ地方に政府機関の移転が可能で、全国の魅力ある地域の再発見と共に一極集中を解消できると知事会は考えたのだろう。ネットのインフラ環境が後押ししたといえる。思えば1990年、国会は衆参両院で「国会等の移転に関する決議」を議決し、「首都機能移転を検討する」が確認された。

★92年には「国会等の移転に関する法律」が成立し、移転先候補地に北東地域の「栃木・福島地域」、東海地域の「岐阜・愛知地域」と「三重・畿央地域」が挙がった。首都機能移転構想や遷都論は盛り上がったが、推進者に当時の自民党副総裁・金丸信がいたことも実現に現実味があった。その間、95年に東京で地下鉄サリン事件、阪神・淡路大震災などが起こり、推進に拍車がかかったが、金丸の政界引退・失脚などがあり、次第にしぼんでいく。2006年には都道府県の広域化をうたう道州制議論が始まり、首都機能移転は事実上立ち消えになっていた。今回は台風や地震などの地域災害とは違い、全国、全世界が対象になって、テレワークでの働き方が進んだ経緯を見れば、今までの首都機能移転とは別のアプローチが可能ではないか。議論は首都をどこにするかというより、東京一極集中の回避だ。日本を巨大なサテライトにできるか、どこでも働けるかが問われる。(K)※敬称略

政治の世界では日々どんなことが起きているのでしょう。表面だけではわからない政界の裏の裏まで情報を集めて、問題点に切り込む文字通り「地獄耳」のコラム。けして一般紙では読むことができません。きょうも話題騒然です。(文中は敬称略)

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