「大腸がんは怖くない」というタイトルにしました。もちろん、がんは怖い病気です。しかし、私が消化器内科医になってからたった10年でも、大腸がんの検査・治療は大きく進歩しました。大腸がんは早期に発見し、適切に治療を行えば命を脅かすことはありません。

 大腸がんというと、検査は大腸カメラが必要になり見つかったら手術になるから怖いというのが一般的なイメージだと思います。カメラや手術方法も格段に進化しています。

 日本の大腸がん検診の受診率は40%程度と報告されており、先進国ではかなり低い水準です。便潜血検査(いわゆる検便)は便を提出してもらい、大腸カメラを受けた方がいい人をお知らせする検診です。便を提出するだけの簡単な検査にもかかわらず、あまりにも受診率が低いのが現実です。「私は大腸がんと関係ない」と思っている人が非常に多いのではないでしょうか?

 2015年には13万人がり患したこの病気と無関係のままでいられるかは、どんなに健康に気を使っていても保証されません。ぜひ大腸がん検診を皆さんに受けていただきたいのです。

 検診を受けて便潜血検査が陽性だったら、大腸カメラを受けることになります。大腸がんが怖いというより「この大腸カメラが怖い」とよく言われてしまいます。確かに準備も大変な検査ですが、以前よりカメラも細く、痛みを感じにくくなっています。

 実際、大腸カメラを受けた方から「この程度なら受ければ良かった」と言ってもらうことが多いです。無論、個人差がある検査ではありますが、怖がらず迷わずに検査を受けてください。

 ポリープやがんが見つかると、手術が必要と思われがちです。現在、大腸カメラの先端から道具を出して行う内視鏡治療が進歩し、以前は開腹手術が必要だった病変も内視鏡で切除が可能となってきました。進行したがんで開腹手術が必要な病変でも、腹腔(ふくくう)鏡を用いて手術することで傷口が飛躍的に小さくなり、患者さんの負担はずいぶん減りました。

 増加している大腸がんに対し、一番の“武器”になるのは大腸カメラです。皆さんが大腸カメラを受けることが、大腸がんを怖いと思わずに済む最良の方法だと私は考えます。

 ◆池谷敬(いけや・たかし) 1981年(昭56)9月21日、静岡県出身。浜松医科大卒。2012年から東京・中央区の聖路加国際病院勤務。内視鏡で粘膜下層を剥離するESDという手法で、大腸がんに挑んでいる。