元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q 加齢によるものなので仕方ないのかなとも思いますが、口元のたるみが気になります。

 A ご年配の方から相談される口元の悩みのひとつに、口角の切れやただれがあります。乾燥やビタミン不足といった要素も複合しますが、実際はかみ合わせが下がったために生じたたるみによって、そのような症状が現れることが多いのです。口元のたるみやほうれい線に関してはどうしても美容的な側面でとらえがち。お口の中の変化と連動していることは意外と皆さんご存知ないようです。外側からのアプローチだけでなく、歯科的な問題もクリアしないと根本的な改善につながりません。

年齢とともに、長く使った歯はすり減り、かみ合わせが下がってくることがあります。その結果、お顔のゆがみやたるみが起きます。これを治すには、かみ合わせの回復および調整が必要です。総入れ歯の方であれば、高さを全体的に上げることができますが、大半の人は自分の歯が残っています。特に、部分的に歯がなくなったことから来るかみ合わせのアンバランスを改善する場合は大変です。例えば左の奥歯がない場合、入れ歯などで奥歯のかみ合わせを回復させます。すり減る前の平面を目指して高さを決めると、今度は今まですり減った位置でかんでいた右がすいてしまう。これを補正するには右側を全部仮歯にして高さを上げなければなりません。つまり、全体を理想的な位置まで回復させようとすると、時間もお金もかかる、根気が要る治療になります。

現実的な話をすれば、歯が数本なくなっただけでは生活にさほど支障がありません。しかしながらしばらく片方だけでかんでいると、必ずいつかはそちらにガタがきます。かぶせ物が外れる、歯が欠けるだけでなく、痛んだりぐらついたりしてきます。そうして雪崩のように歯をダメにしてしまう患者さんは結構いらっしゃいます。

 どのタイミングで食い止めるか…。不幸にして歯を抜かなければならなくなった方には、この言葉を心の片隅に留めておいてもらえればと思います。

その他、若い世代でたるみの原因として問題になっているのが、スムージーなどで代用する「かまない食事」です。アンチエイジングにも効果があるといわれ大流行しましたが、かまない習慣はお口周りの筋肉を衰えさせてたるみにつながります。美容の面でも逆効果です。しっかりかむ食事を心掛けると、唾液も出て歯の汚れも自然に剥がれますし、左右均等にかむ意識をすることは歯の健康を保つのに重要です。スムージーはあくまでも栄養素を補うイメージで取り入れましょう。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。