<信頼できる心臓外科医とは(2)>

 「年間の手術数が多い、イコール信頼できる技量のある心臓外科医か?」という質問を多く受けます。「正しい」と言える点と「正しくない」の両面があります。手術数では、かなり前に「心臓手術を年間100例以上行っている」でラインが引かれたことがありました。しかし、アメリカでは年間150例以上を技量のある心臓外科医と認めています。日本でも150例以上であれば、実力のある心臓外科医だと、私は思っています。

 ただ、心臓外科医として、まずは入り口に当たる冠動脈バイパス手術ばかり、それもよりリスクの少ないケースばかりを選んで手術数を増やしている心臓外科医もいます。それであれば1日2~3例は手術をこなすことができます。

 冠動脈バイパス手術は狭心症・心筋梗塞の手術です。これは心臓外科医としての入り口です。ここから、弁膜症、複合バイパス手術、胸部大動脈瘤(りゅう)・大動脈解離などに進んでいきます。そして、自分によりあった手術を中心に行うことになります。難易度が高く、1日に1例しかできない手術を行っている医師と、バイパス手術をひたすらこなす医師では手術数はおのずと差が出て当然です。

 つまり、スーパードクターだから、どんな手術でもできるのではありません。患者さん自身が手術を受ける疾患で、年間150例の手術を行っている心臓外科医を選択するのが基本となります。そうすると、バイパス手術であればどの心臓外科医、心臓弁膜症であればどの心臓外科医が良いかが浮かびあがってきます。そこで決心がつかない場合は、手術を受けたいと思う心臓外科医の“セカンドオピニオン”を受けて、直接話を聞くことをお勧めします。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)