本格的な夏がやってきました。気温が高ければ熱中症になりやすいのは、ご存じでしょうが、気温がそれほど高くなくても、湿度が高いことで、熱中症になるのです。人の体は、汗が蒸発することで、気化熱が奪われ、身体に熱がこもらない仕組みになっていますが、身体の周りの湿度が高いと、汗がうまく蒸発されなくなり、熱がこもってしまうのです。扇風機やうちわを利用しましょう。

 続いて、カビが原因の「夏型肺炎」。この時期、トリコスポロンというカビが原因の肺炎が多くなります。家にいるとせきがでるが、旅行など家を離れるとせきが止まるのが症状の特徴。カビを退治することが大切ですが、引っ越ししないと治らないという患者さんもいます。

 そして「気象病」です。主に低気圧の影響で、自律神経のバランスを崩し、痛みに対し敏感になってしまうのです。雨が降ると古傷が痛むというのは、医学的にも正しいのです。「イライラする」なんていうのも、症状の1つですね。

 前回、いくつかイライラ対策を示しましたが、ここではやはり効果的とされる「ハーバード式呼吸法」という対策を紹介します。これは「4-7-8呼吸法」ともいわれ、ハーバード大出身のアンドルー・ワイル博士が20年ほど前に提唱したものです。

 <1>口から完全に息を吐き出す(フーと音が出るくらいに)。

 <2>口を閉じて鼻から4秒間吸い込む。

 <3>息を7秒間止める。

 <4>8秒かけてゆっくりと口から息を吐き出す(フーと音が出るくらいに)、という呼吸法です。ワイル博士は、西洋医学と代替医療をあわせた統合医学のオピニオンリーダーとして知られており、「癒す心、治る力-自発的治癒とはなにか」などの著書があります。

 この呼吸法を取り入れているといわれているのが、安倍晋三総理大臣です。ワイル博士が来日した際に直接教わったそうです。呼吸リハビリテーションの専門家で、文京学院大学保健医療技術学部の柿崎藤泰教授によると、理想的な呼吸時間の比率は、「吸気1」:「呼気2」だそうです。長く息を吐くことで副交感神経が刺激されてリラックス効果が生まれ、集中力も高まるのです。「4-7-8呼吸法」も、吸気:呼気の割合が1:2になっています。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。