「体は食べたもので出来ている」という言葉の通り、私たちは日々の食事によって生かされています。さまざまな食べ物を味わえる理由は、入ってくるものに合わせて、口がとても複雑な働きをしているからです。
おせんべいのような硬い食べ物は歯で細かくし、唾液と混ざり合って食道に運ばれます。鋭い形状のままだと、頬や歯ぐきが出血することで危険を察知できます。うどんのような温かい食べ物は、唇をとがらせフーフーと冷ますことで口の中に入ります。熱すぎると舌や口蓋が先にやけどをするので、適温になるまで口の中で転がし飲み込めるようになります。
こうした素早い反応によって、胃から下の消化管が傷つかず、効率よく栄養が取り込める仕組みになっています。何不自由なく過ごしていると気づかない素晴らしい機能が体にはたくさん備わっているのですが、「生命の源」ともいえる口の働きについて、皆さんが深く知る機会は少ないのではないでしょうか。
年齢を重ねると体がくたびれるのと同じように、長年その暮らしを支えてきた口もダメージを受けています。うまくかめない、飲み込めない、むせる、しゃべりづらい…。こうした症状も老化のサインであり、わずかな口の変化が全身に与える影響についても重要視される時代になってきました。
健康診断で数値の異常が見つかったら、生活習慣を振り返ると同時に、口の力を調べてみてください。口にはどんな機能があるかを分かりやすくお伝えすると同時に、歯科医院を保健室のように気軽に利用して欲しいという気持ちから今回の連載タイトルを考えました。
猛暑の夏、冷たいものをおいしく楽しむお供になれば幸いです。
◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)歯学博士、東京医科歯科大学非常勤講師(顎顔面補綴外来)。複数のクリニックで診療を行う傍ら、「口腔(こうくう)ケアの伝道師」としてメディアに多数出演の人気歯科医。最新刊「“食べる力”を落とさない!新しい『歯』のトリセツ」(日経BP)「口の強化書」(アスコム)他、著書多数。日刊スポーツの連載は通算5度目の登場。

