歯科治療が苦手な理由を聞くと、詰め物やかぶせ物を作る際の型取りが気持ち悪いからという声も少なくありません。のどの奥に異物を感じてそれを吐き出そうとする動きは、誰にでも備わった生理的な反射ですが、歯科医院だけで極端に強い反応を示す方は心理的要因が大きいようです。
呼吸の心配や過去の恐怖心など引き金になる部分はさまざまであれ、もし食事が普通にとれるようであれば改善の見込みがあるかもしれません。こうした「嘔吐(おうと)反射」によって歯ブラシ自体がダメな場合は奥歯にトラブルが生じやすいので、身体が拒絶するものとそうでないもののボーダーがなくなるような訓練をしていきます。長年ダメだったという方がほんの数回で克服するケースもありますので、あきらめずに頑張っていただけたらと思います。
古くから使われてきた印象材(いわゆる粘土のような材料)による型取りではなく、レーザーなどの光によって口の中をスキャンし直接計測する「光学印象」も、近年普及してきた新しい技術です。温度変化や術者のテクニックに左右される点が印象材を使った手法のデメリットでしたが、光学印象はこうした心配がなく、精密な型取りができるというのが最大の特徴です。粘土による嘔吐反射がある方でも、光学印象で口の中に挿入するスキャナチップは大丈夫という患者さんがほとんどです。得られた情報をコンピューター上でデータ化し、モニター上で詰め物やかぶせ物のデザインを行い、セラミックブロックから削り出して完成させるという流れになります。現時点では基本的に自由診療扱いであること、導入コストの問題などから普及率は5%以下と言われていますが、今後の拡大に期待しましょう。(終わり)

