高校時代、ボーイフレンドからティファニーのシルバーネックレスをもらった友人がいました。今の若い人には見当もつかない話だと思いますが、当時のハイブランドはアルバイト代を頑張ってためれば学生でも手が届く価格帯。ブラウスの襟元に、プレゼントであろうオープンハートやビーンスをぶら下げた女子が相当数いたのを記憶しています。
最初はキラキラ光っていても、身に着けているうちにどうしてもくすんでしまうのが銀製品です。研磨に使う専用のクロスもお手入れに欠かせないアイテムでした。
歯科大学の実習では、治療に使用する「銀歯」を手作りするカリキュラムがありました。余った材料で指輪を作っても良いというオプションが恒例だったのですが、男子学生はやたら盛り上がっている一方で、女子学生のテンションはさほど高くなく、その温度差は今でも笑い話になるほどです。
金属の質の違いをアクセサリーで体感している女性は、磨かなくて済む、すなわち安定性の良い貴金属を好む傾向にあります。ピアスを使っている方の場合は、自分に合う金属とそうでないものを早い段階で知っていることが多いので、金属アレルギーを心配して歯科医院に来られる方の大多数は女性というのもうなずけます。
口の中に入れる銀歯の正体は、「金銀パラジウム合金」という、数種類の金属を混ぜ合わせて作った合金です。銀だけではしなやかさに欠けるため、加工しやすくするために金も含んでいますが、銀の割合が46%と高い点が特徴です。つまり、経年劣化によって腐食が生じるデメリットは大なり小なり存在します。
口の中で金属がイオン化し、唾液や体液などに溶け出すことで、敏感な体質の方にはアレルギーとして症状が現れます。こうした観点から、この合金を口の中に使っている国は少なく、世界的に見るととてもまれなのです。
◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯科医師・博士(歯学)。口と全身の健康に関する解説を行う『口腔ケアの伝道師』として様々なメディアに登場。「“食べる力”を落とさない!新しい『歯』のトリセツ」(日経BP)「口の強化書」(アスコム)ほか著書多数。

