“聞こえ治療”の最終段階「人工内耳」が適応となると、手術で体内装置を埋め込みます。ただ、人工内耳は「体内装置を埋め込み、それと対外装置をつなぐとすぐに音が聞こえる」というものではありません。手術後のリハビリが重要になります。
その重要事項は、どれだけの大きさの音が来たら、どれだけの電気信号にするかという点で、“マッピング”もしくは“音入れ”と言っています。私たちがマッピングを行うのは、手術から2週間後、ある程度キズが落ち着いたころです。
音入れは、「うるさくなく、良く聞こえる」という電流量と、「これより小さいと聞こえない」の対極の2つを設定します。そして、人工内耳から電流を流し、小さい音のところから少しずつ音を上げていきます。音の聞こえの状況の確認はコミュニケーションをとりながら行っていきます。
ここで音を決めると、マイクで拾った音量を電流量にしてくれます。だから、不愉快な大きい音の手前の大きさまでの音を流し、小さい音はぎりぎり聞こえる音までを流してくれるのです。本人は、音の大きさが違うことをしっかり感じられるようになります。まさに、人工内耳にコンピューターが入っているようなもので、医療機器の進歩はすさまじいものがあります。
この音の調整は、月1回受診してもらって快適に聞こえるようになるまで行っていきます。半年くらいで患者さんはなじんできますので、その段階になると、次は半年後、1年後になります。私たちから「次は半年後」と言われるようになると、“人工内耳があっている”と思ってよい状態です。マッピングを始めて3カ月くらいで状態はぐっと上がり、そこから徐々に良くなって1年くらいで安定する方が多いです。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

