羽生のオリンピック(五輪)連覇の喜びに浸っていた翌朝、不幸に襲われた。財布がない。気付いたのは、羽生の一夜明け会見の場所に着いたとき。ぼーっとしていたのだろう。たった今乗ってきたタクシーに小さなバッグごと置き忘れていた。もらった領収書をみて連絡しようと思ったが、すべてハングルと数字で書かれており、どれが電話番号なのかさえ分からない。どうしよう…。すぐに、日本語堪能な韓国の友人に「助けてください!」とLINEを送った。

 友人リサさんは韓国版の日刊スポーツともいえる「イルガン・スポーツ」の記者。日本のお笑いをYoutubeで見ているうちに言葉を覚えてしまった、というしゃれの分かるすてきな女性だ。彼女の対応は見事だった。30分もしないうちに運転手と直接連絡を取り、私が取材をしている「ジャパンハウス」までバッグを届けるよう手配してくれた。忘れ物に気付いてから約1時半後。羽生と宇野の記者会見を終え建物の外へ出ると、タクシーの運転手が車から降りて待っていてくれた。ハングルは聞き取れないが、「いや~、よかったよ~」みたいな感じで私の肩をたたいてくれた。間違いない。韓国の人たちは優しい。【高場泉穂】