スペインプロリーグ機構(LFP)の管轄である1部、2部リーグでは今季、日本人選手が5人プレーしているが、1部リーグでプレーする2人は今、出場機会に恵まれていない。
■これまでにない不遇に直面
スペイン8年目、Rソシエダード5年目の日本代表MF久保建英(25)は今季開幕から不遇の時を過ごしている。チームがここまでに戦った公式戦10試合のうち3試合で出番なく、その成績は7試合(先発3試合)、252分出場、0得点0アシスト。6試合ベンチスタートが続き、直近のユニオン・サンジロワーズ戦は3試合ぶりの出場となった。
開幕からの公式戦10試合の成績を過去7シーズンと比較してみると、これほど出番が少ないのはスペインでのキャリア初。若干19歳だったスペイン2季目のビリャレアル時代はウナイ・エメリ監督(現アストン・ビラ)指揮下でポジション争いの厚い壁に直面したが、それでも出場時間は今季より長かった。当時は開幕から6試合ベンチスタートが続いたものの、10試合全てで起用され(先発3試合)、333分出場、2得点1アシストと、今よりも好成績を残していた。
今季調子が上がらない主な理由として、ワールドカップ(W杯)北中米大会初戦オランダ戦の左膝のけがが長引き、大幅に出遅れたことが挙げられる。代表戦前、マタラッツォ監督が、「タケはベストの状態でない」と発言したことからも、コンディションが戻っていないのは明らかだった。
昨季終盤から続くパフォーマンスの悪さから、今季のレギュラー確保が容易ではないとの懸念が開幕当初からあった。マタラッツォ監督の採用する4−2−3−1は攻撃のポジションが4枠しかない。オヤルサバルとゲデスは重要な存在であるため、残り2枠をバレネチェア、オスカルソン、スチッチ、今季トップチームに昇格したオチエング、けが明けのパブロ・マリン、監督の信頼を取り戻しつつあるザハリャンと争うことになっている。
■アジア杯の離脱は更に不利
さらに、久保が他の選手と明らかに違うのは、年明けのアジアカップ(※開催国サウジアラビアの情勢悪化により延期の可能性あり)参加で1カ月程チームを抜ける可能性があることだ。シーズンで最も過密日程のこその時期にチームを長期離脱することは、スタメンの座を確保する上で不利に働くことになる。
現地ではまた、ベンチスタートが続いていること、出場時間が非常に短いこと、マタラッツォ監督指揮下となった26年1月からゴールを1度も決めていないこと、25年2月のレガネス戦を最後にホームで約600日間無得点が続いていることなどが危惧されている。
当然のことながら地元メディアの評価も低くなっている。2季前の24-25年シーズンは公式戦52試合出場、7得点4アシストを記録し、クラブの地元紙エル・ディアリオ・バスコの評価が最も高い選手だったが、今季ここまで1試合平均1.5点(最高5点)と低い。しかし、サン・セバスチャンの人々はかつての久保の姿に思いを馳せ、皆が復活を期待している。
■龍之介は直近3試合出番なし
バレンシアの日本代表MF佐藤龍之介(20)のここまでの成績は、5試合(先発4試合)、297分出場、0得点0アシスト。慢性的に財政難の問題を抱えるクラブが今夏、スペインで無名の若き日本人を移籍金400万ユーロ(約7億2000万円)で獲得したことは“サプライズ”と捉えられた(※今夏獲得した7人のうち移籍金を支払ったのは佐藤とアルナウ・マルティネスのみ)。しかし、佐藤はそれを払拭するかのように、プレシーズンマッチ6試合でさまざまな攻撃のポジションでプレーできるポリバレントな能力を示し、2得点3アシストという活躍ぶりで開幕スタメンの座を手に入れた。
開幕からの5試合中4試合で先発と幸先の良いスタートを切ったが、個人の力では降格圏に沈むチーム状態の悪さには抗えなかった。ボールが前線にほとんど入らない状況が続いては本領発揮するのも難しく、信頼を得てレギュラーの座を与えてくれたコルベラン監督が解任されると共に状況が一転。暫定監督となったBチームのオスカル・サンチェス指揮下で2戦連続出番なし。さらに、今季最初の国際Aマッチ期間で日本代表に招集されていたが、自らの意志で予定よりも早くスペインに戻り、スタメン復帰への意欲をアピールしたが、アギーレ新監督初陣でも出番を得られず、直近3試合ピッチに立てていない。
■現地紙「完全に姿を消した」
アギーレ監督はチームに早く戻ってきた佐藤の姿勢や技術力の高さなどを評価している。しかし、初戦のラシン・サンタンデール戦で前監督の構想外だったラバを先発に抜擢し、ダンジュマ、エリオット、オトルビを優先的にピッチに送り出したことを考えると、今後も佐藤にとっては厳しい状況が続くかもしれない。現地メディアは佐藤の現状を「完全に姿を消した」と評し、不動のレギュラーと思われるリオハが負傷欠場した中で出場機会を得られなかったことを不安視している。
地元記者は以前、「まずはスペイン、そしてバレンシアでの生活に慣れることが先決だ」と言っていたが、スペイン1年目の若手選手にとって監督が3人目と目まぐるしく変わるチーム状況で適応するのはなかなか難しいものがあるだろう。
久保や佐藤がトップリーグでポジション確保に苦しむ一方、昨季から2部リーグでプレーする日本人選手はここまで、順調にプレー時間を増やしている。
■喜多はトップデビュー近いか
昨季、1年間の期限付き移籍でRソシエダードのBチームに所属したDF喜多壱也(21)は今季、クラブが150万ユーロ(約2億7000万円)のオプションを行使し、正式にチームの一員となった。
昨季同様にアンソテギ監督の信頼を勝ち取り、ここまでの成績は8試合(全て先発)、696分出場、1得点0アシスト。イエローカード2枚で退場になったセウタ戦、出場停止のグラナダ戦以外、全てフル出場している。
今夏のプレシーズン中、マタラッツォ監督に何度かトップチームでテストされていたことから、センターバックに負傷者が続出した場合、久保と一緒にピッチに立つ可能性もあるだろう。トップチームにはこれまで、マタラッツォ監督の初陣となった今年最初のアトレチコ・マドリード戦で招集されている。日本人選手は常にEU圏外枠という大きな問題が付きまとうものの、このまま活躍し続けた場合、昨季途中からトップチームで不動の地位を築き、スペイン代表デビューを飾っている下部組織出身DFジョン・マルティンのような存在になる日が訪れるかもしれない。
■宮代は序盤の好調から失速
昨季後半戦から期限付き移籍で2部リーグのラス・パルマスに所属するMF宮代大聖(26)は、今夏クラブが150万ユーロ(約2億7000万円)の買い取りオプションを行使したことで完全移籍した。
ここまでの成績は全9試合先発、762分出場、2得点2アシスト。特に開幕直後に目覚ましい活躍を見せ、8月の月間MVPに選出されている。しかし、直近4試合でわずか1勝の15位という成績不振により、ルベン・デ・ラ・バレラ監督が今週解任されたことは、全幅の信頼を得ていた宮代に大きな影響を及ぼすことになるかもしれない。
クラブの地元紙ラ・プロビンシアは、ラス・パルマスが勝ち点獲得に苦しんでいる原因として、チームを牽引するべき選手たちがその役割を果たせていないと指摘。戦犯の一人に宮代の名を挙げ、「シーズン序盤は好調だったが、その後パフォーマンスが完全に失速。相手を抜き去ることも、効果的な連携プレーもできず、ペナルティーエリアにも侵入しなくなり、安定性を欠いている。サイドだけでなくトップ下でプレーしても状況は変わらず、ここ数試合の貢献度は低く、断片的なものに留まっている」とプレーの質が落ちていることを批判した。
■伊藤は足首に問題抱え招集外
シント=トロイデンを契約満了で昨季終了後の退団したMF伊藤涼太郎(28)は、かつて城彰二氏がプレーしたバリャドリードに先月29日、延長オプション付きの今季終了までの契約で加入した。それから2週間以上経過したが、足首に問題を抱えていたことが影響し、個別に調整中でまだチーム練習に参加できていない。加入後からの2試合はどちらも招集外だった。
フラン・エスクリバ監督は背番号10が与えられた伊藤に対し、「彼のプレースタイルはどんなシステムにも適応できる」と期待を寄せているものの、「5月以降、公式戦に出場していないため、辛抱強く待つ必要がある」と万全の状態でないことを明かしており、現時点でいつデビューできるか不透明な状況だ。全てはコンディションを取り戻し、チーム練習に参加してから決まるだろう。
26−27年シーズン開幕から約2ケ月。5人の日本人選手は異国の地で、それぞれの置かれた状況下で戦っている。全員がけがに悩まされることなく、ベストパフォーマンスを発揮し、シーズンの終わりを迎えられることを願いたい。
【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)


