今回は休刊日特別編として、ラグビーを支え続けてきた企業を紹介する。低迷期の日本代表を01年から支えてきたのは「リポビタンD」で知られる大正製薬。15年大会でようやく人気に火が付き、今大会は大会のオフィシャルスポンサーを務める。宣伝よりもラグビーの盛り上がりのために力を注いできた同社の熱い思いに迫った。

「スポンサーの意義とは、スポーツを応援し、健全なる精神の育成と人間の成長をサポートしていくもの。社会的価値の向上であり社会貢献である」。18年間日本代表を応援し続ける同社の根幹には、上原明会長(78)のこの思いがある。

長く低迷期を支えてきた苦労が実ったのは、日本が躍進を遂げた15年ワールドカップ(W杯)。上原氏ら同社幹部は19年大会でW杯のスポンサーになることを検討していた。初戦の南アフリカ戦後、休みを利用して英国へ飛び、スポンサーのやり方を学んだ。当時同行した梅岡久マーケティング本部長(48)は「プロモーションしなくてもみんな(サポートしていることを)知っている。アピールの必要もない。何もしなくても社会活動の結果として企業価値が上がっていると感じた」と話す。

同社が日本代表を応援し始めたのは01年。上原氏が仕事上で付き合いのあった、元日本代表監督の故宿沢広朗氏(享年55)から「日本代表のスポンサーをやって欲しい」と依頼を受けた。上原氏は「ラグビー部もないのになぜ」と疑問を抱いた。同社は「アンチ」を作らないよう、個別にスポンサーを引き受けない方針だった。それでもリポビタンDのCMでおなじみ「ファイト一発」の「努力、友情、勝利」というコンセプトと、ラグビーの「One For All,All For One」の精神が一致すると宿沢氏の思いを承諾した。

日本代表とはいえ、当時は試合のテレビ中継も少ない時代。15年W杯を迎えるまで支援していることを知らない社員も多数いた。それでも梅岡氏は「宣伝がメインではない。子どもたちへの応援とラグビーの発展。健康産業なので間違ってない」と、熱い思いで活動を続けてきた。

15年W杯後には日本代表の活躍にスタッフを含め50人全員に100万円の報奨金を贈呈した。上原氏が「直接渡したい」と自ら代表スタッフと対面し、その旨を伝えた。大きく報道され、選手だけでなくファンからも「ありがとう」の言葉をもらった。梅岡氏は「スタッフにあげたことを選手が喜んでくれたのがうれしかった」と振り返った。

自国での大会で、さらなるラグビーの盛り上がりを期待する。12会場の自治体へ出向き、地域の大会も応援。準備は整いつつある。梅岡氏は「W杯後がもっと大事。代表は引き続きサポートしたい。子どもや学生の応援もしていく。ラグビーが普及しないと健全な心身の成長のサポートにならない」と、その先も見据えている。【松熊洋介】